ravide思考『半商品・半サービス』

2025-06-10

『「創造的である」ということ上 農の営みから』『「創造的である」ということ下 地域の作法から』【著者:内山節、出版:農山漁村文化協会】という本に出会ったのは数ヶ月前。ravideが事業を展開していく中で大切にしたいと思っていたことが、深く思考され、「関係性」の観点から哲学的な文脈で語られていたとても腹落ちした。

私たちが取り組んでいることは、利益を追求することを目的とした市場原理に則ったものではなく、より人々の関係性を大切にした文化的な提案であり、それは「半商品・半サービス」なのだと。以下より、書籍から抜粋した内容(○で開始「」部分)を基に、ravideの食育について考察していきたい。

「半商品とは、市場では商品として通用し、流通しているけれど、それを作る過程や生産者と消費者との関係では、必ずしも商品の合理性が貫かれていない、そんな商品のことです。」

「簡単に述べれば、お金を通してやりとりされてはいるが、その面だけではみることができないもの、そういう商品です。」

「『半商品』には、商品価値を超えた追加的な価値が、どこかに生まれていなければなりません。つまり、お金の価値だけで清算することのできない価値があるということなのですが、それは『あの人が丹精こめてつくってくれた』ということなのかもしれない し、『あの人が推選してくれたことへの信頼度』なのかもしれません。そういったものは、 非合理的な価値なのですから、その関係を共有しているからみつけだせる価値なのです。その商品をみると、つくり手が無事に仕事をしていることがわかって嬉しくなる。逆にその代金が振り込まれてきたとき、利用者が無事に暮らしていることがわかって嬉しくなる。そんなふうにしか言えない非合理的な価値である場合もあるでしょう。ここでも、非合理なものをつかみとる力が必要とされているのかもしれません。」

ravideでは世間が「令和の米騒動」や「食材価格の高騰」で世間が騒ぎはじめる以前から、生産者さんたちと連携し、こだわりの栽培方法でつくられた安心で美味しい食材を、保育園へ産直で届け、それを食育の一環として、家庭でも手に取れるように園内販売に取り組んできました。その際の取引価格はもちろん、お互いの生活を尊重し合い、関係性が続いていく適正な価格を設定しています。気づけば、減農薬、無農薬の食材でありながら、相対的に、昨今の一般市場の価格よりも低い値段になっていることもあり、この騒動の中、良くも悪くも反響や問い合わせを頂くことがあります。

売る側はできるだけ生産コストをかけずに、どれだけ安く作って高く売るのか。買う側は、誰がどのように商品を作っているのかは意に介さず、とにかくより良い商品を、いかに安く買うか。そんな市場原理の中では、手間暇がかかる上に収穫量が減ってしまう減農薬・無農薬栽培にあえて取り組むのは非合理的な判断なわけです。消費者の意識の中には関係性どころか、モノの向こう側に「人」が存在していることすら無視されていることもあるのかもしれません。困ったときだけ、価格が高騰したときだけ騒ぎ立てていてはいけません。

生産者と消費者がお互いを尊重し合い、互いの生活が続いていくあり方、「関係性」を築いていくことが大切です。

「〜『半商品』、『半賃労働』であったがゆえに、どちらも商品経済の合理性が貫徹されず、 生産者と消費者との、あるいは雇主と奉公する者との間に、商品経済の合理性だけでは説明できない人間関係があり、だからこそそこに文化的な営みもあったと考えることができるのではないでしょうか。」

ravideは子どもたちへ向けた「食育」をサービスの軸にしていますが、この他上記でも触れた給食への産直サービス&園内野菜販売の「なおラビ」、夏祭りの屋台やお泊まり保育でのクッキング、卒園式後の謝恩会における食事提供など園の行事における食の提案、卒園児向けの食育企画など、気づいたら既存のサービスを超えた提案をさせてもらっています。それら一つ一つは各園ごとに要望が異なり、合理的な判断をするならば引き受けられないこともありますが、私たちは「子どもたちへ食の楽しみを届けること」そのものに喜びを持ち、いつも非合理的な判断をしてしまうのです。けれども、商品やサービスという枠を超えて、金銭をはらんだ関係性を超えて、文化的な営みを生み出せることが私たちの存在意義であり、そこに「食の力」を感じています。

ありがたいことに3期目を迎えているravideですが、特に卒園児親子イベントは大好評で、過去2年間で卒園を見送った子どもたち、保護者の方たちと今のつながり続けられることは、私たちにとっても大きな喜びです。私たち自身、地域におけるコミュニティが活発だった時代の話は、昔話的に聞くもので原体験は持ち合わせていませんが、卒園児親子イベントで子ども大人が入り混じり、我が子以外の子どもとも自然に、良い意味で当たり前に関わっている姿をみていると、こんな感じだったのかなと思うことがあります。

これからも、子どもたちへ食を通した豊かな「原体験」を提案していきたいと思います。

今だけravideの食育=食表現を1回、無料で試すことができます!実践園の見学も随時受け付けています!ぜひお気軽にお問い合わせください。