古典から学ぶ『三澤勝衛著作集「風土論」』

2025-06-18

前回のブログに引き続き、内山節さんの著書からravideの食育=食表現の考察を深めていこうと思います。今回より『内山節と読む世界と日本の古典50冊 出版:農山漁村文化協会』の中から特に刺激を受けた内容をこの後のブログで順に取りあげていきます。とにかくこの本の中から心に刺さった言葉を、自分なりに咀嚼、解釈して、思考したことを表現してみることをしていきたい。そこに意義なんかない。この行為そのものが面白いからやる。ということを続けていきます。

『風土 和辻哲郎:著』の章にて、 『三澤勝衛著作集「風土論」』が紹介され以下のような内容がありました。

自然はきわめてローカルなものなのである。だから昔の人々はそういう自然の性格をよく知っ ていた。そのうえで自然との折り合いをはかっていたのである。ところが、とりわけ戦後になってコンクリートミキサー車が登場し、コンクリートが安く利用できるようになると、コンクリー トに依存した治水対策が広がっていく。それはコンクリート護岸があるから大丈夫だという「信仰」を生んだだけではなく、ダムによる治水対策を一般化させた。本当ならローカルな自然の性情に合わせて堤防のつくり方を変えたり、場所によっては河畔林を整備し遊水池になるところを確保するといった対策をするべきなのに、全国一律的にダムによる治水対策がすすめられたのである。ところがダムによる治水には限界があり、想定以上の雨が降れば逆にダムの放水によって 洪水が起こるといったこともしばしばである。

私たちはよく日本の自然というような言い方をするけれど、正確に述べればそれは正しくない。 人間たちが暮らす世界にとって重要な自然は、もっとローカルなものなのである。たとえば風化花崗岩土壌によってつくられている中国山地の風土がある。ところがこの地域においても、山や森のつくられ方がさまざまだし、そこを流れる川の性格も違う。内陸部と海岸地域も異なるし、 瀬戸内海側と日本海側も違う。深くとらえていけば、三澤勝衛が述べたように、自然のあり方も、 自然と人間の関係のつくり方も狭い地域ごとにさまざまなのである。自分たちの暮らす風土を深く掘り下げ、その風土にふさわしい暮らし方、地域のつくり方、自然と人間の関係のあり方を再確立していかないと、これからも私たちは災害のニュースを見続けることになるだろう。

これは「教育」にも通ずる視点だと考える。特に自然に近い存在である乳幼児教育においては、ローカルな視点を持たなければ子どもの姿を捉えることはできない。東京の都心部、コンクリートのビルに囲まれた環境も、森林が身近にある環境も同様にローカルなものであり、そこから、子育て家庭、保護者の思考、暮らしや仕事、子育ての考え方が形作られている。前回のブログでは「実践主義」の観点から、実践が思考や哲学を築いていくことに触れたが、ここではローカルな視点から「自然との交わり方」「自然との関係性の築き方」から思考が生じてくることが見えてくる。どちらが先とも言えないが、自然環境の影響から行為行動が形作られ思考が生まれるにせよ、自然との関係性を思考することから暮らす場所を選び取り行為行動が表れるにせよ、人の営みに「自然との関係性」が不可欠なことは言うまでもない。

少し考えれば本来的にそうであるはずであり、ともすれば教育のあり方もローカルな視点で変化して然るべきなのだが、日本全国統一の「義務教育」が行われている。もちろん、識字率や基本的な計算能力の普及率の高さなど、良い面があることは承知の上で、もっと地域ごとに適した教育のあり方や、地域の特徴を活かした教育内容の検討が図られるべきだという意見には大きく賛成する。

話をravideの食育=食表現に引き戻す。保育園、幼稚園の教育においては小学校以降の教科教育以上に、地域性が強く影響する。その地域、そこに集う、子育て家庭、子ども、保護者、保育者、地域住民も含めた地域社会、自然社会との関係性の中で保育教育内容を検討していくことが重要となる。乳幼児教育こそ日本全国一律に行うことは不可能であり、ローカルな視点が不可欠なのである。

だからこそravideの食育=食表現では、「外部講師」として、一方的に決めたプログラムをその日、その時限りの活動として取り組むことはしない。それは「食」という営みが、遊びであり、生活と大きく結びついているから。外部講師として、一方的な内容や、一歩通行的な方向性での提案では「やりっぱなし」になってしまう。

ravideでは、必ず施設の先生たちとの「対話」を通して内容検討、提案をしていく。手間かもしれない、非効率かもしれない、それでも時間をかけて「対話」を続ける。「外部」講師ではなく、たとえ講師であっても、「ともに生活を営む仲間」になっていきたい。子どもの興味関心、保護者のニーズ、園の志、地域のもつ特徴を感じ取り、「ローカルなまなざし」を取り入れた提案をしていきたい。そんな思いを持ち動き続けることで、生産者さんとのつながりも少しずつ広がっている。

これから連携園が増えていっても、この観点を持ち続けていくことをここに約束したい。各園、施設ごとにravideの食育ではなく、その園や施設「オリジナルの食育=食表現」を一緒に考えつくっていくことを。コンクリートのダムをつくって、その地に馴染まない無理を強いるような提案ではなく。一時的なテクニックや子ども騙しの方法論的な食育ではなく、子どもたちの生活に根付く、その風土にふさわしい「感度を育み文化を築いていく食育」を。

例えば「イワシの手捌き」という提案。ローカルな特徴を活かす視点だけでなく、ローカルに欠けるが子どもの原体験として重要な内容は教育の中で提案して補っていくことも重要だと考える。日常に、地域に、海や新鮮な海鮮へ親しむ機会が十分にあるのならば、わざわざ園内でそんな提案をする必要も無いのだ。東京都内だからこそ求められる食育なのかもしれない。ローカルな特徴・個性を活かし、不足する部分を補うことから「オリジナルな食育」は生まれていく。

今だけravideの食育=食表現を1回、無料で試すことができます!実践園の見学も随時受け付けています!ぜひお気軽にお問い合わせください。