古典から学ぶ『古い医術について 著:ヒポクラテス』

2025-06-20

引き続き、内山節さんの著書からravideの食育=食表現の考察を深めていこうと思います。『内山節と読む世界と日本の古典50冊 出版:農山漁村文化協会』の中から特に刺激を受けた内容、とにかくこの本の中から心に刺さった言葉を、自分なりに咀嚼、解釈して、思考したことを表現してみることをやり続けます。

「〜ヒポクラテスは客観的に分析することが可能なものとして病気をとらえていた。ところが原因を考察する方法では、彼の視点は人間の個体性にとどまっていなかった。人間が生きるということはさまざまな要素の集積から成立していて、その要素の大きな部分として自然とのつながりがあることを彼はみていた。『古い医術について』には「空気、水、場所について」という論考が収録されているが、その冒頭は次のような文章ではじまる。

正しい仕方で医学にたずさわろうと欲する人は、次のようにしなければならない。まず、一年の諸々の季節がそれぞれどんな影響をおよぼす力があるかを考察しなければならない。なぜならば、諸々の季節はたがいに類似してはいず、季節同士および季節の変わり目にひじょうな相違が あるからである。次に考慮しなければならないのは、暖および寒の風、とくにあらゆる場所にいる人々に共通な風と、それぞれの地域に特有な風である。それからまた、いろいろな水の性質を も考慮しなければならない。水は味と重さに相違があるように、それぞれの性質にも非常に相違があるからである。したがって、医者は未知の町に着いたならば、その町の位置が風の点と太陽の昇りの点からいってどうであるかをよく吟味しなければならない

人間は自然に包まれて生きている。そうして、そういう世界のなかで病気になる。だから、太陽がどのように昇り、風がどのように吹き、どんな水を用いて暮らしているのかをまず医者は知らなければいけない。なぜならそういう自然がたえず身体を突き抜けていくなかで人は生き、病気になるからである。ヒポクラテスは他の箇所では大地の違いについても言及しているし、さらにはどんなふうに食事をしているのかとか、酒の飲み方、身体を使う労働をしているのか、いないのかというようなことにも医者は注意を払わなければいけないと述べている。

ヒポクラテスは人間とは何かを考察する哲学を嫌ったが、それは彼にとって大事なことが『人間とは何か』ではなく、『人間が生きるとは何か』だったからである。生きることはさまざまな要素の集積の上に成り立っていて、家族のあり方や地域のあり方もその要素の一つだし、生活、労働のあり方、さらにはその人を包む自然のあり方などが、その人の生きる世界をつくっている。 そしてその世界のなかで人は病気になる。つまり、ヒポクラテスにとっては、病気の原因の考察は、患者の生きる世界の考察からはじめなければいけないものだった。人は、一人の人間という個体性のなかで生きているのではなく、自然をふくむ多様なものとの関係性のなかで生きているのである。」

ravideの思考と言葉に照らし合わせてみると「人はいつだって主体的であり環境要因である」ということへつながる。人が生きることは「関係性」の中に生じているということに強く共感する。「食」の営みを考えても、自然の恵みを活かし生産者さんが育てたり、漁をしたりして得られた食材を、運送業者さんが運んできてくれてはじめて自分たちの手元に届く人たちがほとんどなはずである。自分の生活を鑑みると「生きている」ということすら、なんだか烏滸がましく感じてくる。生きることを深く考察するほどに、生きているという以上に「生かされている」という感覚が湧いてくる。

どんな思考を巡らせるかは一人一人へ委ねるとして、ravideでは「食」を通して子どもたちが「生きること」について思考するきっかけを提案したい。「生きることは食べること」とはよく言ったもので、上記の抜粋部に「生きることはさまざまな要素の集積の上に成り立っていていて…」とあるように、「食生活」は家族の在り方、地域との関係性、生活と労働のあり方、自然に対する考え方等によって大きく内容が異なる。「生活習慣病」は元々「食生活習慣病」という名だったという説があるように、食生活のありようは病気にもつながり、生活の大部分に影響している。「食生活」を考えることは、家族や仕事、自然社会との関係性など「生き方」を考えることであり、身体的な健やかさはもちろん、精神的な健やかさにもつながる。「食」を楽しもうとする姿勢は「人生を楽しみ続けること」へつながっていく可能性を大きく秘めている。ravideはそんな思いで食育=食表現を届け続けます。

その土地の土、水に触れ、日当たりや風を感じる。自然と人が交わり営まれる。田植えにはお米を収穫すること以上に、生活や思考、身体性にもつながる文化的なものが含まれているように感じます。

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